大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1903号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人池留三の上告趣意第二點について。

論旨は、被告人が被害者に暴行脅迫を加えた事実はなく、仮りにそのような事実があったとしても、被害者が抗拒不能に陥ったという事実は全記録の何處にも発見することができないと主張しているけれども、刑法第一七七條にいわゆる暴行又は脅迫は相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを以て足りる。

そうして被告人が被害者にその程度の暴行脅迫を加えたという事実は、原判決擧示の證據によって十分立證されている。なお又被害者下江文子及び親權者母下江イチヨが告訴を取下げ被告人を宥恕する旨の上申書を提出したことは、右のような事実の認定を妨げる理由とはならない。所論の擬律錯誤の主張は、原判決とは異なった事実の認定を前提とするものであるから、採用することができない。(その他の判決理由は省略する。)

以上の理由により舊刑事訴訟法第四四六條最高裁判所裁判事務處理規則第九條第四項に從い主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例